大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」RELAY COLUMN

スポーツ科学部

2026.08.04

科学の力で「常識」を疑え!乳酸を味方にする思考法

筆者:浜田 拓(スポーツ科学部教授)

1.その「常識」、本当に合ってる?

 みなさんはスポーツ活動などの激しい練習中、「乳酸が溜まって体が動かない!」と言われたり、そう思い込んだりしたことはありませんか?実はその「常識」、現在の科学の世界ではすでに180度ひっくり返っています。今回は、最新の乳酸研究を例に挙げながら、私たちがスポーツ科学の学びにおいて最も大切にしている「科学的思考」の面白さについてお話しします 。

浜田拓教授



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2. 乳酸は全身を駆け巡る「細胞への指令役」

 長年、乳酸は運動時に筋肉を疲れさせる「老廃物」だと思われてきました 。しかし、最新の研究によって、乳酸は単なる老廃物ではなく、全身を巡りながら細胞に「もっとエネルギーを作れ!」「体を成長させろ!」とメッセージを伝える「細胞への指令役」であることが判明しています 。現在、スポーツ科学の世界では「乳酸=疲労の原因」という説は明確に否定されています 。むしろ、乳酸は私たちのパフォーマンスを維持し、支えてくれる「最強の味方」です 。

3.脳を元気にする「脳の肥料」を増やす

 乳酸の活躍の場は筋肉だけではありません。実は、私たちの「脳」の中でも乳酸は主役級の働きをしています。乳酸は脳のバリアを軽々と通過し、神経細胞の重要なエネルギー源になります。特に、注目されているのが、記憶力を高める働きです。運動によって体内で作られた乳酸が脳に届くと、乳酸が合図となり、脳を元気にする設計図(遺伝子)に働きかけます。これにより、「脳の肥料」とも呼ばれるBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が増え、記憶力や学習能力を高める可能性があることがわかってきました。運動した後に頭がスッキリして勉強がはかどるのには、実はこうした科学的な理由があるのです。

4.科学的態度は一生モノの武器になる

 最新の知見を知ることはとてもワクワクしますが、それをそのまま自分に当てはめるだけでは不十分です。ヒトの身体は複雑で、個々の選手の特性や環境はバラバラだからです。だからこそ、スポーツの場面では、ネットや本の情報を鵜呑みにせず、ガリレオ・ガリレイらも大切にした「科学的な考え方」を実践することが求められます。うまくいかない原因を論理的に分析・検証できれば、感情的な叱責や無理な精神論に頼る必要はなくなります。スポーツを通じて「課題を見つけ、仮説を立て、検証する」という科学的態度を学ぶことは、将来みなさんがどんな分野に進んでも活躍できる一生モノの武器になるはずです。ぜひ本学で、一緒にスポーツの常識を塗り替える探究を始めてみませんか?

キーワード
  • スポーツ科学
  • 乳酸
  • 科学的思考

浜田拓(スポーツ科学部教授)

専門は運動生理学、 担当講義はスポーツ生理学、健康と運動の生理学を担当。これまで、急性運動および慢性運動が身体機能に及ぼす影響について研究を進めてきた。主な研究テーマは、骨格筋および脳における運動適応効果とその生理学的機序の解明であり、その研究成果を国内外の学会や学術誌において発表している。

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