筆者:徳田 真彦(スポーツ科学部准教授)
1.キャンプが人を育てる?
もし電気もコンビニもない場所で、3日間生活するとしたら皆さんはどうでしょうか。
私の実施するキャンプでは自分で火を起こし、仲間と協力して食事をつくり、テントで眠ります。雨が降った時は工夫しなければずぶ濡れになりますし、うまく火がつかなければ食事もなかなか作れません。
「そんな不便なこと、わざわざやる必要あるの?」と思う人もいるかもしれません。しかし実は、この“不便な体験”の中にこそ、人を大きく成長させるヒントがあります。私は野外教育を専門として、キャンプなどの自然体験が人の成長にどのような影響を与えるのかを研究しています。野外教育とは、自然の中での体験を通して人の成長を促す教育のことです。キャンプや登山、マリンアクティビティなどがその代表的な例です。
2.不便さや予定不調和な体験がもたらす恩恵
自然の中では、普段の生活のようにすべてが整っているわけではありません。火を起こすにも時間がかかり、食事を作るにも仲間と協力しなければなりません。天気が変わることもあり、思い通りにいかないことも多くあります。しかし、こうした「思い通りにいかない状況」こそが大きな学びの機会になります。例えばキャンプでは、班ごとに生活をしながら食事づくりやテント設営を行います。活動や人間関係がうまくいかないときには、自分自身を見つめ直すことや、時には仲間と相談し、「どうすればうまくいくか」を考えながら試行錯誤を重ねていきます。
私が関わってきたキャンプでも、最初はなかなか自分から話せなかった子どもが、活動を重ねるうちに「こうしたらいいんじゃない?」と仲間に声をかけたり、自分から積極的に行動し、リーダーシップを発揮するようになる姿を多く見てきました。こうした力は「生きる力」とも呼ばれます。困ったときに自分で考え、周りの人と協力しながら問題を解決していく力です。
3.VUCAの時代にこそ求められる、自然の中で試され問われる能力
近年、社会は「VUCA(ブーカ)の時代」と言われることがあります。VUCAとは、社会の変化が激しく、未来を予測することが難しい時代を表す言葉です。こうした時代では、決められた答えを覚えるだけでなく、自分で考え、状況に合わせて行動する力がますます重要になります。自然の中での体験には、そうした力を育てる可能性があると考えられており、私が行ってきた研究では、自然体験を通して、生きる力や社会人基礎力といった非認知能力の育成や、自然体験を行う地域を好きになるといった社会的効果もあることがわかっています。
便利な社会では、多くのことが簡単にできるようになりました。しかしその一方で、自分で考えたり、仲間と協力して課題を乗り越えたりする経験は、以前より少なくなっているとも言われています。自然の中での体験は、そうした力を育てる大切な学びの場です。もし皆さんが自然の中で活動する機会があれば、「この体験は自分にどんな変化をもたらすのだろう?」と考えてみてください。そこには、教室では得られない“学び”が隠れているかもしれません。

薪割りの様子
火を起こすためには、薪割りからはじまります。

チームビルディングプログラムの様子
みんなで知恵を絞り、協力して課題に取り組みます。

ナイトハイクの様子
情報を集め、分析し、現在地や道が正しいか確認し、判断、意志決定して進むべき方向を決めます。

ロッククライミングの様子
クライマー(登る人)にとっては、自分と向き合いチャレンジする体験、ビレイヤー(安全確保者)にとっては、人の命を預かる重みを感じる体験になります。






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