筆者:坂田実加(スポーツ科学部講師)
1.数学の授業
大阪体育大学では、一般教養科目の一つとして「数学」の授業を開講しています。この授業では、線形代数学の基礎を学びます。具体的には、連立方程式を解く方法を勉強します。「連立方程式の解き方なんて中学校や高校で習った」と思った人もいるかも知れません。中学校では、2つの文字(変数)についての連立方程式、高校では3つの文字についての連立方程式の解法を学びました。では、変数の数がもっと多くなった場合はどのように解くのでしょうか。そこで登場するのが「行列」という道具です。
行列とは、数を長方形に並べたものです。例えば、連立方程式の変数(x,y,zなど)や等号(=)を取り除いて、数だけを抜き出して並べてみると、数が長方形に並んだものが表れます。これが行列です。この行列の世界には、高校までに慣れ親しんできた数の世界とは異なる、少し不思議な性質があります。
2.AB≠BAの世界
こんなことを想像してみてください。「タンクトップを着た後、ジャケットを着る」のと「ジャケットを着た後、タンクトップを着る」のとでは、結果として異なる見た目になりますね。このように、世の中には「順番」が結果に影響を与えることがあります。数学でもこれと似たようなことが起こることがあります。今まで学校で習ったであろう、自然数、整数、有理数、実数、複素数では、かけ算の順番を変えても結果は同じになります。例えば、2×3=3×2 です。しかし、行列では、AかけるBとBかけるAが同じになるとは限りません。これが「非可換」と呼ばれる性質です。非可換の場合は今までに習った公式も使えなくなります。例えば、(a+b)2=a2+2ab+b2という展開公式が成り立ちません。行列では、(A+B)2=A2+AB+BA+B2となります。ここで、ABとBAは一般には違うものなので、2ABとすることはできません。「なぜ?」「どうして?」と不思議に思った人は、ぜひ本学の数学の授業を受講してみてください。
3.当たり前は本当に当たり前なのか
今まで当たり前だと思っていたことが、実はそうではなかったと気づいた瞬間、新しい世界が広がります。高校までの教科書に書かれていることは、世界のほんの一部に過ぎません。これがすべて、これだけが正しいと決めつけずに、もっと深く、もっと広く学び、視野を広げてスポーツ科学の研究に邁進してほしいと思います。
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