大阪体育大学スポーツ科学センター主催のセミナーで大学院生の早田亘輝さん(のぶてる、大学院博士後期課程3年)が「スクワットの『下ろし方』で変わる身体の適応戦略とは?― 8週間の介入実験で分かった驚きの新事実 ―」をテーマに講演しました。
早田さんは2018年、大阪体育大学に入学後にS&Cルームで活動し、そこから得られた知識・経験を元にバスケットボール部男子にトレーニング指導をするなど活躍、卒業後には大学院に進学し「競技力向上」「競技復帰のためのトレーニング」を研究テーマに活動しています。

セミナーで講演した早田亘輝さん

講演に聞き入る参加者
今回のセミナーは早田さんと下河内洋平教授が共同で執筆し、最近、NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)の学術誌である『Journal of Strength and Conditioning Research』に掲載された以下の論文の内容をベースに、スクワット動作における「下ろし方」の違いが身体へどのような適応をもたらすのか、8週間の介入実験をもとに紹介されました。

スクワットの実践
セミナーではスクワットでゆっくり下ろした場合、スピードをつけて下ろしてブレーキをかけた場合のトレーニング効果の実験結果や、どうやって日々のトレーニングに組み込むかの説明があり、受講者は実際にスクワット動作で動きを意識しながら体験していました。
セミナー終了後、早田さんにインタビューしました。
――今回のセミナー開催のきっかけは
自分自身がトレーニング現場にいたこともあり、研究成果を研究室内だけに残すのは勿体ないので、現場の学生や指導者の方々に役立ててもらえればと考えセミナーを開催しました。
――実験はどのように進めた
被験者24人に協力してもらいスクワット動作で「ゆっくり下ろすグループ・スピードをつけて下ろし途中でブレーキをかけるグループ・ジャンプトレーニング」の3グループに分け、週3回のトレーニングを8週間継続してもらいました。「ゆっくり下ろすグループ」ではスクワットの最大挙上重量を使用して5回のしゃがみ込みを3セット、「スピードをつけて下ろし、ブレーキをかけるグループ」では最大挙上重量の半分の重量で10回を3セット行いました。これらのグループ間では、総トレーニング量(重量×回数×セット数)を同量に揃え、条件を統制しました。これにより、スクワットの「下ろし方の違い」による効果だけを純粋に比較できるようになっています。
ゆっくり下ろすグループは筋肥大に大きな効果が見られ、スピードをつけて下ろすグループは神経系やジャンプ力、短時間での筋力発揮の向上に効果が見られました。面白かったのは、スピードをつけて下ろすグループはジャンプトレーニングよりも大きな効果が得られたことでした。
――大学院に進んだきっかけ
大学入学時からS&Cルームで活動しバスケットボール部男子のトレーニング指導をしていましたが、トレーナーとして高みを目指すため科学的な知識を身につけたいと考え大学院へ進学しました。初めはトレーナー志望でしたが大学院で学ぶうちに研究が楽しくなってきて、今はそちらに力を入れています(笑)
――研究の楽しさはどこか
現場では「扱う重量が上がった」「ジャンプ力が伸びた」という結果だけを見ていますが、研究では「なぜ扱う重量が上がったのか?どういう要因でその結果が出たのか」を調べていきます。自分の中で仮説を立てて様々な視点から調べていく事で、詳細なメカニズムが分かってくることが面白いところです。調べていくうちに最初に立てた仮説が違う事もありますが、それもある意味面白いところです。
――普段はどのような事を研究しているか
現在は、前十字靱帯(ACL)再建術後のアスリートの機能回復について研究しています。現場では術後に競技復帰を果たしても、下肢機能やジャンプ力が元の水準まで戻りきらないという問題があります。
この現状に対する解決策を見出すため、今回の健常者を対象としたトレーニングを研究しました。健常者から得られた「最適なトレーニング手法」の知見を前十字靱帯(ACL)再建術後のアスリートのプログラムに応用し、彼らの下肢機能やジャンプ力の向上にどのようにつながるのかを検証しています。
――研究論文作成について
今回の論文は下河内先生には指導役として研究テーマの立案、研究デザイン構築、実験の実施、論文執筆にわたり指導していただきました。下河内先生からは一貫して「論理的な仮説を持って現場や研究に臨むこと」「逆算して方法を考える思考プロセス」の重要性をアドバイスされました。
執筆については「この研究テーマがどのように重要か」を論理的かつ簡潔に伝えることに力を入れました。また、世界にも研究成果を見てもらいたいので英語での執筆に挑戦しましたが、そこもなかなか大変でした(笑)
――将来は何を目指すか
研究一本に絞るのではなく、現場で怪我からの復帰や競技力向上を目指す人々に、有益な情報を還元できる研究者を目指しています。現場に出るとケガをした選手から「しゃがみにくい」「飛びにくい」などの相談を受けることも多く、それが新しい研究テーマにつながることもあります。今は研究者として一人前になるために研究メインで行っていますが、将来的には、実践とのバランスを取りながら研究活動を続けていきたいです。





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