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2026.04.27

大学院で社会人が学ぶ魅力とは 元甲子園大会審判員の西貝さん 大阪体育大学大学院オンライン授業で学ぶ 「何かのためでなく、学ぶこと自体に価値がある」

 春夏の甲子園大会で長年審判員を務め、今も高校野球大阪大会、大学、社会人野球でジャッジに携わる西貝雅裕(にしがい・まさひろ)さん(60)が、昨年から大阪体育大学大学院でスポーツ心理学を学んでいます。大阪・太成学院大学高校の保健体育科教諭として勤務し、夜は自宅でオンライン受講する日々。「仕事をしながら大学院で学ぶことは不可能だとあきらめていたが、オンライン授業で可能になった。この1年間、学ぶことがこんなに楽しいことだとは思わなかった」と話しています。

元甲子園大会審判委員で大阪体育大学大学院博士前期課程の西貝雅裕さん
【大阪体育大学】

元甲子園大会審判委員で大阪体育大学大学院博士前期課程の西貝雅裕さん


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 西貝さんは、仙台高校、日本体育大学を経て、1989年、太成学院大学高校に赴任。野球部でコーチ、顧問 を務める一方、1997年からアマチュア野球の審判員に。甲子園大会で2004年から2024年まで審判員を務め、2025年、日本高校野球連盟から審判委員永年功労者表彰を受けました。今も大阪府高校野球連盟、近畿学生野球連盟、社会人・大阪府野球連盟の審判員としてグラウンドに立っています。

 2002年、日本スポーツ心理学会が創設したばかりの同学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士補(当時、現スポーツメンタルトレーニング指導士)の資格を取得しました。

 西貝さんがメンタルトレーニングに関心を持ったのは、1994年。その年の秋はチーム力にある程度自信を持っていましたが、大阪大会5回戦で福留孝介(元阪神・中日)のいるPL学園に敗れました。

 「こっちは1死満塁でスクイズ失敗。PLは2死二塁でタイムリー。この差は技術じゃない」と選手の心理に関心を持ち始めました。最初は根性の差だと思い調べているうちにメンタルトレーニングを知りました。当時、近畿大学に勤務していた高妻(こうづま)容一教授(その後東海大学)と出会い、高妻教授主催の研究会に毎月通うようになりました。当時はメンタルトレーニングの研究者がまだ少なく、高妻教授に付いて講習会で学ぶほか、自ら複数の高校野球チームでメンタルトレーニングの指導にもあたったといいます。一方で日本スポーツ心理学会がそれまではなかった公認の資格を創設することになりました。資格は基本的に大学院修了者が対象だったが、メンタルトレーニング活動の実践者として、スポーツメンタルトレーニング指導士補 の資格を取得したといいます。

 その経緯もあり、西貝さんにとって大学院での学びは「人生の宿題だった」といいます。「大学院を経ずに資格をもらって20年以上活動している。どこかのタイミングで、大学院で学びたいと常に思っていた」と振り返りますが、仕事もあり、大学院に通うことは不可能でした。

2024年夏の甲子園大会で審判員としてのラストゲームに臨み、二塁塁審を務める
【西貝雅裕さん提供】

2024年夏の甲子園大会で審判員としてのラストゲームに臨み、二塁塁審を務める西貝雅裕さん提供】

 そんな時、スポーツメンタルトレーニング指導士の研修会で、普段から接している大阪体育大学の菅生貴之教授から「うちの大学で社会人向けのオンライン授業を始めた。うちで学びませんか」と誘われました。

 大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科は2022年度、昼夜開講制をスタートしました。昼は対面授業、夜間はオンラインで実施。大学に通学しなくても職場や自宅で夜間にオンライン授業を受講することが可能になりました。また長期履修制度も導入。博士前期課程は原則2年だが、仕事などの理由で2年での履修が困難だと認められた場合は、2年分の学費で最長4年まで在学期間を延長することが可能になりました。

 西貝さんは「社会人にとって最高の制度」だと思ったといいます。菅生教授から詳しく制度の詳細を聞き、家族にも相談したうえで、2024年9月に一般選抜試験を受験し、合格。2025年度から博士前期課程の菅生研究室に所属する。昨年は、高校での勤務が終わると帰宅し、週5回、午後6時から7時半までオンライン授業を自宅のパソコンで受講し、24単位を取得しました。

 西貝さんはオンライン授業に加えて、長期履修制度のメリットを上げます。「通常の2年間で授業に加えて修士論文に向けた研究、リサーチに打ち込むことは、日中は仕事がある社会人には厳しい。長期履修制度のおかげで、社会人でもプレッシャーなく学びと仕事の両立ができる。自分は4年間めいっぱい勉強したい」といいます。

昨年夏の大阪大会で長年、甲子園大会でともに審判員を務めた皆さんと。前列左が西貝さん。右はこの試合がラストゲームの堅田外司昭さん。後列左は田村正樹さん、右は田中豊久さん
【西貝雅裕さん提供】

昨年夏の大阪大会で長年、甲子園大会でともに審判員を務めた皆さんと。前列左が西貝さん。右はこの試合がラストゲームの堅田外司昭さん。後列左は田村正樹さん、右は田中豊久さん西貝雅裕さん提供】

 審判員にもメンタルトレーニングが必要であることは、スポーツメンタルトレーニング指導士として感じています。自分自身、なぜミスジャッジしたのかを考えた時、思い込み、バイアスに行きつきました。「カウント2ナッシングでは吊り球のボールが来るかもと思い、俊足の左打者が三遊間にゴロを打ったらセーフかもと思う。自分だけでなく周囲の審判員にもそんな経験があるかと聞いたら、みんな『あるある』だった」

 このため、野球指導誌『ベースボールクリニック』(ベースボールマガジン社)で3年間、毎月、「審判員のメンタルトレーニング」を連載しています。

 修士論文のテーマは現在、「アマチュア野球審判員のウェルビーイング」を予定しています。「金銭的なメリットがなくても審判員を続けるのはなぜか。漠然と心理的な充足感などだろうと思っているが、誰も調べておらず、調査してまとめたい。途中で審判員を辞めた人にも話を聞きたい。これから審判員を目指す人のためになる研究にしたい」

 文部科学省は、社会人が働きながら学び直すリカレント教育の推進をはかっています。2025年に入学した西貝さんの同級生も、大半は社会人でした。

 西貝さんは「大人の学び」の魅力を強く感じています。「学生のころの勉強は入試、就職など『何かのため』だった。でも、大人になって今、勉強すると、そこに目的がある分けではない。勉強自体に価値がある。その点が大学院で学ぶことの魅力だと思うので、社会人の方々もトライされたらいいと思います」と話しています。

大学院スポーツ科学研究科

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