中学などで運動部活動を指導する学生を育成する大阪体育大学の「グッドコーチ養成セミナー」の前期が5月12日(月)、開講しました。すでに学校現場などで運動部活動の指導にあたっている学生、これからの指導を希望している学生ら1~4年の17人が出席しました。

グッドコーチ養成セミナーリーダーの中尾豊喜教授
◆日本初の学生指導者養成プログラム
グッドコーチ養成セミナーは2021年、全国で初めての学生の運動部活動指導者養成プログラムとして開設されました。参加学生は、独自に開発された教育プログラムでコーチングの基礎、スポーツ倫理、事故対応などを学び、修了者には修了証が発行されます。意欲と責任感のある学生を対象に指導者を養成するため、授業ではなく、カリキュラム外で自由参加のセミナーとして実施しています。

グッドコーチ養成セミナーの開講式
◆学生71人が学校現場で指導
また、大体大は各自治体などからの部活動指導の要望を受けて受講生らに伝え、指導競技や条件がマッチした学生を各自治体に紹介しており、学生71人(2025年3月時点)が中学・高校などで部活動指導にあたっています。
スポーツ指導者としての学生の育成と、学校現場と学生のニーズのマッチングをシステマティックに進める大体大の取り組みは全国でも極めて珍しく、スポーツ庁からも高い評価を受けています。

あいさつするプロジェクト責任者の植木章三副学長
◆学生が「部の規範づくり」を議論
12日の開講式では、プロジェクト責任者の植木章三副学長が「多くの自治体から、部活動でみなさんの力を借りたいという声を聞きますが、部活動では、生徒の特性に応じた指導、危険性への対処など様々な課題があります。皆さんは、専門的な知識を身に付けて、要請がある現場に指導に行ってほしい」とあいさつした後、グッドコーチ養成セミナーリーダーの中尾豊喜教授が講義しました。
第1講のテーマは「生徒集団の規範づくりと指導法」。昨年度後期に、学校現場で指導にあたる学生から時間などルールを守らない生徒への対処などの悩みが寄せられました。講義では、部活動指導をしている学生から「時間通りに集合させるのではなく、生徒自身にどうしたら集合時間に間に合うかを考えさせた」「部の役割分担をゲーム感覚で決めさせた」などの事例が報告され、学生一人一人が感想や方策を述べるなど意見交換し、課題解決策を探りました。
また、中尾教授からはこの日の朝、愛媛県の少年スポーツクラブチームからオンラインでの野球指導の要請があったことが紹介され、全国の自治体からこの講座に高い注目が寄せられていることなどが示されました。

参加した学生
◆プログラムはソフトバンク、大阪府教育庁も担当
前期は7月14日まで6回実施され、大体大と連携協定を結びICTを活用したスポーツDXの視点から体育実技や運動部活動指導をともに推進しているソフトバンク株式会社や大阪府教育庁なども講義を担当します。
前期のプログラム計画は以下の通り。
<グッドコーチ養成セミナー前期・講義テーマ>
5月12日 ①生徒集団の規範づくりと指導法(中尾教授)
5月19日 ②スマートコーチ、AIスマートコーチのアプリ活用法と可能性を探るディスカッション(ソフトバンク・阿部飛雄馬氏ほか)
5月26日 ③運動部活動の地域展開と社会スポーツの現在と未来(総合型スポーツクラブ・福知山ユナイテッド代表理事・片野翔大氏)
6月9日 ④熱中症の予防(有吉晃平准教授)
⑤顧問や部活動を担当する教諭等との情報共有(中尾教授)
6月30日 ⑥大阪府における部活動改革の現状(大阪府教育庁・中田将人首席指導主事)
7月14日 前期閉講式/⑦部活動指導における調身・調息・調心:身体心理学の立場から(関西大学文学部・村上祐介准教授=オンライン視聴)

中学サッカー部で指導して気づいたことを話す仲泰陽さん
◆受講生の声・嶋崎陸人さん(1年) 「セミナーで学んでぜひサッカー部を指導したい」
スポーツ科学部1年の嶋崎陸人さん(大阪学院大高校)はサッカー部に所属しています。小さいころからサッカーをしていて、自分はスポーツと関わることが好きだと気づき、スポーツを学べる大阪体育大学に入学。中学生への指導方法を学べるセミナーがあると知って受講を決めました。「将来は中学校の体育の先生を目指している。生徒たちと部活動を通して一緒に成長したいので、セミナーで学んでサッカー部を指導したい」と語ります。自分自身、部活動ではチームの仲間との関わり方やチームワークを学び、得たものは大きかったといいます。学校現場では教員が多忙で、部活動を指導する余裕がなくなっているが、「自分たちが指導法を学んで中学校の先生たちの代わりになれたらいい」と話しました。

中学サッカー部での指導を目指す嶋崎陸人さん
◆陽本千咲さん(2年) 「中学バレー部での指導に活かしたい」
スポーツ科学部2年の陽本千咲さん(城南学園)も初めてグッドコーチ養成セミナーに参加しました。大阪府藤井寺市教委から大学にあった依頼に応募し、今年1月から市立藤井寺中学バレーボール部で部活動指導員を務めています。1~3月は週4回、授業が始まった4月以降は週末に指導しています。部活動指導を始めたのは、教員を目指すかどうか迷っていて学校現場を自分の目で見ることと、大学ではクラブに所属していないが、小学5年から高校3年まで続けたバレーに関わりたい思いからだったといいます。部活動では、小学校からのバレー経験者と中学からバレーを始めた生徒間で競技への熱量やモチベーションの違いがあり、全員を同じ目標に向けさせることに難しさを感じるといいます。セミナーは指導するための専門的な知識を学ぶために受講を決めました。「自分自身、部活動を通して挫折を乗り越える精神力を鍛え、飽き性だった自分が唯一夢中になれ、成長につながったと思う。セミナーでは部内のルール作りなどを学びたい」と話しています。

中学バレーボール部で部活動指導員を務める陽本千咲さん
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