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2025.04.26

女子野球W杯7連覇・MVPの白石が世界一、個人タイトルを振り返る コーチング研究誌「櫂(かい)」から

 大阪体育大学硬式野球部女子の白石美優(現阪神タイガースWomen)は2024年、第9回WBSC女子野球ワールドカップファイナルステージでMVP、首位打者、ベストナインを獲得し、日本の7連覇に貢献しました。世界一への道のりをスポーツ科学部スポーツ教育コース発行のコーチング研究誌「櫂(かい)」で振り返り、8連覇に向けた意欲を語っています。

女子野球W杯ファイナルステージでMVP、首位打者を獲得した白石美優(2024年)
【ⒸWBFJ】

 

第9回WBSC女子野球ワールドカップ 優勝/MVP/首位打者/ベストナイン ~世界一への道のり・個人タイトルの受賞を振り返って~

硬式野球部(女子) 白石美優 「私の決意と取り組み」

 昨年(2023年)、第3回BFA女子野球アジアカップへ出場した際、私は、今の自分の技術では世界に通用しないと痛感しました。この経験をきっかけに、もう一度フィジカルを土台から作りなおす必要性を感じ、大学内にあるS&Cルームで別メニューのトレーニングを始めました。これまでも硬式野球部(女子)部員として、部単位で週1回のトレーニングを行ってきましたが、個別に週2~3回へと回数を増やしトレーニングに励みました。S&Cのトレーナーに「来シーズンは今シーズンの成績を越え、スピード感とパワーを兼ね備えた選手になり、ワールドカップに出場したい」と目標を明確に伝えました。その結果、より細やかにトレーニングメニューを組んでいただき、マンツーマンの指導を受けることもありました。1か月後、2か月後とトレーニングを継続する中で、プレーをしながらその筋肉量の増加を実感できるぐらいにパワーアップしました。特にスイングの力強さや走塁のスピードアップを感じ、自分自身の成長を確認しながら、身体作りの大切さを改めて学ぶ機会になりました。

「世界一を経験して」
 ワールドカップでは、世界の選手と戦う経験を通して多くのことを学びました。海外の選手は日本人選手に比べて体格が大きく、日本人にはないパワーの強さを感じました。「日本の繋ぐ野球」に対し、海外は、「ホームランで点をとる」というプレースタイルで、どれだけ点差を広げても安心できない展開が多くありました。それでも、「繋ぐ野球」を選手が理解し、役割を全うすることにより、日本の野球を徹底することで最終的には勝利し、世界一になることができました。
 個人的には、初戦(チャイニーズ・タイペイ戦)で、ベンチスタートとなり、本当に悔しい気持ちでいっぱいでした。とにかくチャンスがあれば必ず出場したいと思い、常に準備をしていました。2戦目からはレフトやセンターで出場することができ、毎試合、緊張より楽しむことができ身体が軽く、全試合を通して自分の理想のプレーができました。
 決勝戦は、7連覇がかかる大切な試合でしたが、気負わず、とにかくトップレベルの選手と戦える喜びを感じたいと思い試合に挑みました。その結果、1球1球のプレーが楽しく、攻守にわたりこの舞台に立てている喜びを感じていました。イニングを重ねるごとに球場全体が緊張感に包まれながらも自分自身のプレースタイルを変えずにやり遂げたことは、今後の野球人生において糧となる経験になりました。決勝戦の最後の打者をキャッチャーフライに打ち取り、捕手がファウルフライを捕球した瞬間、優勝が決まりみんなでマウンドに集まり喜びを分かちあった瞬間は今でも鮮明に覚えています。

侍ジャパンコーチを務めた横井光治大体大監督と
【ⒸWBFJ】

「個人タイトルを受賞して」
 今回、『MVP』『ベストナイン』『首位打者』という3つの個人タイトルを受賞できたのは、多くの方々の支えのおかげです。監督をはじめ、S&Cルーム、ATルームのトレーナーさん、栄養指導をいただいた栄養士さん、そして日々の練習をともにした硬式野球部(女子)のメンバーの存在が、私をここまで導いてくれました。
 ワールドカップの初戦はベンチスタートとなり『とにかく試合に出たい』『チャンスが来たら絶対にヒットを打つ』このことだけを考えて出場機会を待っていました。その結果、1戦目の途中出場で結果を残し、2戦目からはスターティングメンバーに起用されました。攻守ともにチームの勝利に貢献する結果が出ていました。特に打撃ではヒットを量産しました。これまでの経験からヒットが続くと欲を出しすぎ、空回りしてしまうことがあるので欲張らないことを自分自身に言い聞かせていました。
 実際にタイトルの受賞を気にし始めたのは残り3試合の時でした。試合会場の外野に設置されたデジタルスクリーンに、出場選手の打率がリアルタイムに表示されており、大会打率が一時的に「.875」とこれまでにない好調であることをこの時に意識しました。ただ最後まで欲張りすぎず、一つ一つのプレーに集中し、「チームの勝利のためにチャンスでヒットを打つ」ことを積み重ねた結果が今回の受賞につながりました。個人タイトルの受賞はとても自信になり、これまで支えてくれた方々への感謝の気持ちを結果でお返しできたことがとてもうれしく思います。

「もう1度、侍JAPANに選出されたい気持ち」
 次の大会では、日本の8連覇がかかっています。すでに今回の経験を活かし、もう一度、世界の舞台で戦いたいという強い気持ちになっています。ワールドカップでの戦いを通じて、世界のレベルを知りました。この知識と経験を土台にさらに自分自身を鍛えていきたいと思います。
 そして侍JAPANの歴史を受け継ぎ、新たな歴史を作っていきます。そのためには現状に満足せず、国内でトップレベルの選手を目指して日々挑戦し続ける必要があります。特に連覇をかけた大会はプレッシャーがとても強く、今大会も主軸の先輩方は優勝した瞬間、そのプレッシャーからの解放で涙があふれていました。そのプレッシャーに勝つためにも技術だけでなく、メンタルの強さをこれまで以上に追求していきます。目標は、もう一度、侍JAPANに選出され、8連覇という歴史を刻むことです。次に選出されるまでに次世代の選手達にとって憧れとなるプレーヤーを目指し、自分のプレーでチームを引っ張りたいと考えています。

「応援してくれた方々への感謝」
 さいごに、私がここまで成長できたのは、個人の努力だけではありません。試合スケジュールに合わせて、細やかにサポートいただいたスポーツ科学センターのスタッフの皆様、一緒に練習してくれたチームメイト、応援してくれた家族や友人に心から感謝しています。本当にありがとうございました。

コーチング研究誌「櫂」

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