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2021.08.20

東京オリンピックで柔道男子コーチを務めた生田秀和准教授にインタビューしました~「金メダル5個は言葉に言い表せない、偉業」

 東京2020オリンピック競技大会で柔道男子のコーチを務めた生田秀和准教授(柔道部男子監督)に、オリンピックを振り返ってもらいました。

<記事は下に続きます>

――柔道は男女で史上最多の金メダル9個、男子も史上最多の金メダル5個を獲得した。
 前々回の2012年ロンドン五輪は金メダルゼロ。そこから井上康生氏が監督に就任し、新体制でゼロから積み上げ、立て直しました。金5個は言葉では言い表せないほどの偉業です。
――生田監督の日本代表との関わりは。
 井上体制2年目の2013年、井上監督から「ジュニアの重量級を強化したい。協力してくれないか」と電話がありました。当時は桐蔭学園高、筑波大、ALSOKと続いた現役を終えた翌年。光栄な話で、以後、全日本柔道連盟ジュニア強化コーチを務め、2016年リオデジャネイロ五輪後はシニアの指導も兼務しました。ジュニアは中学から大学3年までと幅広い年代を指導し、教え方や選手とのコミュニケーションの取り方など、とても勉強になりました。
――東京五輪で金メダル5個を獲得した要因は。
 旧態依然の精神論だけではない、例えば、各選手のウィークポイントだけに焦点をあてた部分稽古など、緻密さを重視した指導の成果だと思います。井上体制では全日本柔道連盟の科学研究部の力も最大限に活用しました。膨大な映像を分析し、審判がどんなタイミングで「指導」を与えるかなど傾向を分析して選手に伝えました。
――五輪期間中の日本チームは。
 私はNTC(ナショナルトレーニングセンター)に常駐し、100㌔以上の重量級の選手を中心に調整にあたりました。日本チームは初日から60㌔級の高藤直寿、66㌔級の阿部一二三、73㌔級の大野将平が3日連続で金メダル。この3人はある程度計算できていましたが、4日目の81㌔級の永瀬貴規はこれまでケガに泣いてきた選手。2000年シドニー五輪を最後に日本が優勝できていない階級だけに、東京にかける思いが伝わる金メダルでした。5日目の90㌔級の向翔一郎は3回戦敗退となりましたが、自分の前まで4日連続金メダルのプレッシャーは、考えられないほど強かったのだと思います。
 翌日、金メダルをつかんだ100㌔級のウルフ・アロンは減量がきつく、PCR検査でツバも出ないほど。それでも冗談を言って明るくふるまうのが彼の魅力で、「自分の力を信じて頑張れ」とNTCから送り出しました。100㌔超級5位の原沢久喜は、1回戦は研究の成果が出てトリッキーな韓国選手に勝ちましたが、本来の力を出し切れませんでした。また、初採用の混合団体はフランスに敗れて2位。言い訳にはなりませんが、選手は個人戦にすべてをぶつけた後で再減量せねばならず、大変だったと思います。
――日本チームの指導で得たことは。
 井上康生監督からとても多くのことを学びました。「準備してなんぼ」「崩れる時は一瞬、積み上げていくことには時間がかかる」ことを徹底して選手に教えました。一方で、合理的なことをとことん突き詰めたうえで、精神的なものも重視しました。
――五輪で学んだことを大学での指導でどう生かすか。
 映像班の競技分析はルール変更がある時はとても重要になります。ゼミ生にも分析させたい。また、全日本柔道連盟の合理的な練習方法をより取り入れたい。例えば、寝技は立ち技からの移行でのほんの少しのすきで7~8割が決まることが分析で分かりました。数字を使って具体的に説明すれば、選手も理解が深まると思います。

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