NEWSお知らせ

学内トピックス

2021.04.30

高校女子選手権決勝の甲子園開催のインパクトは?~本学硬式野球部女子・横井監督に聞く

 女子硬式野球の全国高校選手権大会の決勝が、今年8月22日、初めて阪神甲子園球場で開催されることが決まりました。第103回全国高校野球選手権大会の準々決勝後の休養日に試合が行われます。女子野球全体にとって発展につながる歴史的なニュースです。
 2011年から大阪体育大学硬式野球部女子を率いるとともに、全日本女子野球連盟理事、侍ジャパン野球女子日本代表団長、関西女子硬式野球連盟理事長として女子野球の振興に携わる横井光治監督に、甲子園開催の意義や女子野球の現状と課題などを聞きました。

 ――甲子園開催が決まった意義は。
 昨年2月に日本高等学校野球連盟と全日本女子野球連盟、全国高等学校女子硬式野球連盟による意見交換会があり、以後、具体的な検討が始まったと聞いています。今回の決定で、女子選手にとっての夢、目標ができました。それはすごく大きなこと。野球は男子であっても女子であってもその競技の魅力の感じ方に違いはありません。その魅力にひかれた女子たちが活躍する場を提供してくれる社会になってきたことが大きな前進だと思います。男子高校野球のこれから100年先の歴史とともに、女子高校野球のこれから100年の新たな歴史を築いていければ、子どもたちの夢が膨らむと思います。それを考えるととても楽しみです。

 ――女子野球との関わりを教えてください。
 大阪体育大学硬式野球部女子は2009年に創部しましたが、監督は不在でした。37歳だった2011年、第1回全国大学女子硬式野球選手権大会に参加するにあたり、監督就任を請われたのがきっかけです。私は大阪商業大学附属堺高校の野球部出身で、以後は大阪体育大学附属福祉専門学校、日本福祉大で福祉を学び、大阪体育大学健康福祉学部で講師を務めるかたわら、軟式のクラブチームでプレーしていました。初めて女子部員を見た時は肩が弱く打球は飛びませんでしたが、試合に出られるかどうか分からないのにひたすらに練習する姿勢に衝撃を受けました。福祉の生活支援は対象者の日常を観察しコミュニケーションを取って潜在的な能力を引き出しますが、福祉の支援と野球の指導は共通性がありました。また、女子野球の連盟は2014年から各組織の理事などを務め、昨年9月のワールドカップ(メキシコ)の侍ジャパン女子代表チームの団長になりましたが、大会はコロナ禍で延期になっています。

 ――女子野球の課題を教えてください。
 普段の練習や大会を開く球場の確保が難しく苦慮していますが、その中で京都府福知山市、和歌山県田辺市、兵庫県丹波市などが積極的に大会を誘致してくれています。また、全日本女子野球連盟は昨年、「女子野球タウン認定事業」を始め、侍ジャパン女子代表の合宿誘致を進める佐賀県嬉野(うれしの)市、全国高校選抜大会などを開催している埼玉県加須(かぞ)市、女子野球W杯を初めて日本で開催した愛媛県松山市などが選ばれ、各自治体が支援を進めています。

 ――女子野球の競技人口は。
 女子硬式野球は2020年度で連盟に91チームが登録し、競技人口は2229名。2015年度は62チーム、1529名ですので、チーム、競技人口とも1・5倍に増えています。このほか、男子の硬式野球部に所属する女子の部員数は日本高校野球連盟によると1万1914名で、マネージャーの登録も多いのでしょうが、選手として頑張っている部員も多数いると思います。男子野球部に所属する女子選手は、高野連の規程などにより試合に出場できない、甲子園球場などのグラウンドに立てないなど様々な制限があります。男女の体力差、筋力差を考えた場合、女子野球部として発展していくことが望ましいと思います。その意味でも、女子にも甲子園への道が開かれたことは、女子野球のすそ野を広げ競技人口が拡大するとともに、女子野球部の増加にも寄与するのではないでしょうか。

 ――一方で、大学卒業後も野球を続ける環境はまだ不十分です。
 2009年に創設された女子プロ野球リーグは選手の多数が退団した減少などの影響で今年、公式戦を休止していますが、一方でプロ野球を統括するNPB(日本野球機構)がクラブチームの設立に乗り出すなど新たな動きが出てきました。昨年は「埼玉西武ライオンズ・レディース」、今年は「阪神タイガースWomen」が設立されました。タイガースWomenには本学からも新卒1名、OG3名が入団しています。12球団がチームを作り、リーグとして発展していけば女子野球を続ける場も増えると思います。そのためには、選手自身が女子野球の魅力をアピールしていくことが必要。例えば女子は男子ほど肩は強くないですが、その分、外野からの素早い2カット返球など連携の巧みさなどで魅せることができます。また、本塁打があまり出ない分、連打が必要。「つなぐ」が女子のキーワードになります。

※横井光治(よこい・みつはる) 大阪体育大学社会貢献センター講師、47歳。大阪商業大学附属堺高校で投手。1995年大阪体育大学附属専門学校卒、2006年日本福祉大学大学院博士前期課程修了。2011年大阪体育大学健康福祉学部講師。同年硬式野球部女子監督。現在、全日本女子野球連盟理事など。

 

▲