1下肢アラインメントと
運動能力の関係性検討

骨盤から足先までの骨の配列や捻じれを現す下肢アラインメントの逸脱は、「下肢アラインメント不良」と呼ばれ、スポーツ外傷・障害の発生リスクを高めると考えられている。本事業では、下肢アラインメント運動能力との関係性について検討し、以下4つの検証を行い、その成果を公表(学会で発表)した。

これらの結果は、臨床や先行研究でスポーツ傷害の危険因子として考えられている下肢アラインメントの特徴と一致した(Woodford-Roger et al 1994, Loudon et al. 1996, Myer et al 2008, Uhorchak et al 2003, Kramer et al 2003, Power et al 2005)。

「下肢アラインメント不良」は、下肢傷害の発生率を高めるだけでなくアスリートの運動パフォーマンス低下にも関連することが明らかとなった。

2トレーニング頻度の高い女性アスリートにおいては
下肢アラインメントと膝伸展筋力に関係性は見られない?

下肢アラインメントと、心理学的・生理学的限界における膝伸展筋力およびスクワット1RM(最大挙上重量)の関連性を検証した。大腿骨前捻角のみ膝の伸展筋力測定と関係性を示した。しかしながら、その関係性は弱く、すべての下肢アラインメントはスクワット1RMとの関係性が認められなかった。レクリエーションレベルの対象者においては、スクワットや着地動作などの関節動作や膝の伸展筋力と関係することが報告されているが、本研究の対象者のようにトレーニング頻度が高く十分にトレーニング介入がなされている女性アスリートにおいては下肢アラインメントの影響度合いが低い可能性を示唆した。

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3スクリーニングチェックによる両脚着地動作と
実際の競技動作の関係性検討

トレーニングの基本動作である「ドロップジャンプ(DJ)動作」で不良動作を示すアスリートは、「競技中に前十字靭帯(ACL)損傷などを誘発するハイリスク動作及び危険肢位の出現率が高い」という仮説の検証を行った。

DJ動作においてACL損傷の危険因子に関連する動きを呈する者は、競技中にハイリスク動作を示す確率が高いことが示された。
しかし、DJ動作における振る舞いが同じように実際の競技中に現れるわけではないため、今後、介入研究により「DJ動作の改善が、競技動作の改善につながるか」を検証する必要はある。

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4心理的要因と運動能力の
関係性検討

個人や集団に内在する心理的要因は選手のトレーニングに対する取り組みに影響を与え、長期的にはトレーニング効果にも影響を与える可能性があります。そこで本研究では、個人的要因である「内発的動機づけ(自分自身の中から生まれるモチベーション)」と集団的要因である「集合的効力感(自身が所属する集団が持つ総合的能力への自信)」の2つの心理的要因がフィールドでの運動能力とどの程度関係しているのか検討することを目的として行いました。

その結果、「集合的効力感」が高い人ほど、5-10m間のスプリントタイムが短く、サイドステップの回数が多く、パフォーマンスが高いことが明らかとなりました。
また「内発的動機づけ」が低い人は集合的効力感が高くなるほど垂直跳びが低くなりましたが、「内発的動機づけ」が高い群では集合的効力感の垂直跳びへの影響は見られませんでした。

つまり、「内発的動機づけ」が低い人は、「集合的効力感」が高い状況ではフィールドでのパフォーマンスを低下させてしまう可能性を示唆しています。以上のことから、個人と集団のどちらの心理的要因も考慮した上でトレーニングへ介入することの必要性が考えられます。

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5女性アスリートのフィールドパフォーマンスにおける
モチベーションと集団心理的要因の交互作用の検討

フィールドパフォーマンスにおける個々の「内発的動機づけ」と、集団における「集合的効力感」の心理的要因の影響と、その交互作用を検討したところ、フィールドパフォーマンスと、内発的動機づけ、集合的効力感との関連が見られた。
また、「内発的動機づけ」と集合的効力感、どちらも考慮した上でトレーニングへ介入することの必要性が示唆された。

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6介入トレーニングプログラムの開発

本事業では、

  • ①効率的で安全な衝撃吸収および減速動作の習得
  • ②下肢の筋力・パワー発揮能力向上
  • ③運動遂行時の身体重心制御能力向上および外乱刺激への対応能力向上のための体幹の安定性向上

を目指したトレーニングを、本学の女子ハンドボール部、女子バスケットボール部、女子バレーボール部を対象として行った。
具体的なトレーニングのアプローチとしては、各競技チームに所属するトレーニングコーチが各競技特異性の原則に適合させトレーニングプログラムを作成・指導を行った。

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