大阪体育大学サッカー部男子が、地域の子どもからお年寄りまでが集う食堂や小学生宿泊イベントを通じて子どもたちを育てる泉佐野市「てらこや」活動の中心メンバーとして運営しています。
NPO法人「全国てらこやネットワーク」の大阪府泉佐野てらこや(SANOTERA)が実施する活動。SANOTERAにはメンバー15人中サッカー部員が学生代表、運営専務、事務局長などで8人所属、大阪体育大学の学生6人、関西外国語大学の学生1人も参加し、松尾元太監督は顧問を務めます。
SANOTERAでは、毎月1回、管理委託する市指定文化財「旧向井家」でてらこや食堂「おいでや」を開催。春、夏、冬の年3回宿泊事業を実施する他、地域イベントのブース出店などを通じて世代間交流を深める取り組みをしています。学生らは授業、クラブ、アルバイトの合間を縫って運営に携わり、会長を務める極楽寺(泉佐野市)の岩田真明(しんみょう)住職は「全国でてらこや活動に学生が参加していますが、活躍度は体大生が一番」と話し、学生は「参加した子どもが大人になった時、楽しかった思い出として自分たちのことを思い出してくれたらうれしい」と話します。
メンバーの大橋利都(りつ)さん(スポーツ科学部3年、鳥取・米子北高校)、米野万尋(まひろ)さん(スポーツ科学部3年、新潟・新発田南高校)、石橋怜果さん(教育学部3年、大阪・大塚高校)に活動の様子を聞きました。

左から米野さん、大橋さん、石橋さん
――活動が始まったきっかけは
代表の岩田真明さんがご住職を務める極楽寺の関係者に大学サッカー部の関係者がいて、「大学生にいろいろな経験をさせたい」と相談したのがきっかけだそうです。そういった経緯で活動が始まり18年目を迎えますが、最近ではサッカー部の学生だけでなく、他クラブや教育学部の学生も参加しています。
――具体的な活動内容は
毎月第1日曜日に泉佐野市土丸にある旧向井家住宅(泉佐野市指定文化財)を利用し、食事を提供しています。こども食堂というよりは、赤ちゃんからお年寄りまでが集まる地域の交流スペースのようなイメージです。
毎月、参加する人たちが喜んでくれそうなメニューをみんなで考え準備します。食材は大阪府と、NPO法人が運営するフードバンク泉佐野から提供してもらっていますが、足りない分は参加費から費用を出して、買い出しして調理しています。
食事が終わった後に何をするかは参加者の自由なので、近くの川で子どもと遊んだりしています。最近ではスイカ割りをしたり、近くの山で竹を切って樋(とい)を作り、流しそうめんをしたら喜んでくれました(笑)。

料理も自分たちで考えて作ります
――参加者は毎回、何人ぐらいか
おおよそ50~60人ぐらいです。雨の日でも30人ぐらいは参加してくれて、子どもより大人の方が多いこともあります。子どもも大人も含めて参加者といろいろ話したり、遊んだりしながら楽しく過ごしています。
――食堂以外の活動は
毎年春・夏・冬に実施する2泊3日の宿泊イベントが大きな活動です。自分たちでゼロから企画を考えて運営しているのですが、子どもたちに大人気になっています。また、世代間交流も深めたいので地域のお祭り会場、イベント運営の手伝いや、飲食ブースを出店するなど、季節ごとに行事があります。和泉市のイベントで豚汁うどんを出店した時は大盛況で完売でした。

室内での活動

イベント出店、冷凍ミカンなどを販売しました
――宿泊イベントの内容は
2025年度の春・夏・冬は、おいで屋のすぐ近くの関西聖地霊園で2泊3日のキャンプをしました。春は最終日に春祭りをやるのですが、学生は屋台や衣装を作り、子どもたちはスーパーボールすくいやコインゲームなどのブースを運営しました。夏はうちわ作りや川遊び、水鉄砲を使ったサバイバルゲームなど、夏らしさのある遊びをして、冬は餅つきや段ボールハウス作り、火打ち石や火起こしなどをしました。薪を使ってドラム缶の湯を沸かし、五右衛門風呂も作ったことがあります。毎回30人前後の小学生が参加してくれて、その次も参加する子どもも多く、やりがいがあります。

一緒にうどん作り

火起こしも事前練習します

パン食い競争の準備
――運営するうえでの工夫ややりがいは
小学1年生から6年生まで続けて参加する子も多いため、同じ企画ばかりにならないよう新しいネタを会議で話し合います。ただし、安全性を考えすぎると楽しさが半減してしまうので、そこのバランスは会議でしっかり話し合います。
運動会やパン食い競争など体を動かす企画は特に盛り上がりますが、学年が違う子同士なので、同じように楽しめるようなルールや方法を考えるように心がけています。また、当日の段取りや進行をスムーズにするため、事前の準備はかなり時間をかけてやるようにしています。
活動していて感じることは、単発のボランティアではなく継続的に関わるので、会うたびに子どもたちが変化していくことです。1年生は最初ほとんど話さず、親と離れて不安で泣くパターンが多いですが、上級生がその子の面倒を見るようになります。最初は泣いていた子が上級生になると泣く子をサポートする側になるので、見ていて面白いです。
保護者から「安心して預けられた」「次の事業でこんなこともやってみてほしい」などと言っていただけることもあり、励みになっています。同時に、大切なお子さんを預かることに責任も感じています。

段ボール遊び
――活動を通して学んだこと
子どもだけでなく、イベントなどでは地域の方々とも入念に打ち合わせますが、普段関わることのない人たちと話すことで、自分にない考え方や他人への伝え方を知ることができ、社会人になる前にすごく良い経験をしていると思います。また、宿泊イベントなどは何カ月も前から企画、準備、予算確認をしますが、普通に大学生活を送っていたらこういう経験はできないですし、授業、クラブ、アルバイトで忙しい中、時間を管理する能力も身についたと思います。それに、自分たちの活動で子どもや地域の方が喜んでくれることは活動してみないと分かりません。子どもたちが大人になった時、楽しかった思い出として自分たちのことを思い出してくれたらうれしいですね。
泉佐野てらこやSANOTERA代表の岩田真明さんの話
学生は子どもの相手、合宿の企画・運営、食事の準備なども全て担当しています。大変疲れるものですが、体大生らしく体力でやり切る姿はいつも頼もしいと感じています。全国各地で同じようにてらこやの活動をしている学生がいますが、活躍ぶりは間違いなく一番だと自負しています。
それに、この活動の主な目的は学生の自主性・主体性を伸ばすことです。大学で単位がもらえるわけでもなく完全にボランティアです。学生たちは勉学、クラブ活動、アルバイトの合間でこの活動を続けていますが、子どもたちが学生の姿を見て手本となっていることは最高の教育だと思います。こういった積み重ねが地域社会を良くしていくと信じ、学生たちと活動を続けていきたいと思います。



