何らかの要因や背景で登校しない、あるいは登校したくてもできない状況にある不登校の児童・生徒は、文部科学省の調査では全国で約35万人(2024年度)にのぼります。各自治体で対策が取られ、大阪府泉佐野市では、市教育支援センターが家庭と学校の中間的な居場所として2施設を運営。社会人・大学生を中心とするボランティア「メンタルフレンド」を配置して、今年は約25人が登録し児童・生徒に寄り添いながら相談相手になったり、学習面のサポートをしたりしています。
大阪体育大学では学生が毎年メンタルフレンドに登録し活動していて、今年は学生11人がメンタルフレンドとして活動。
学生たちは学習サポートとして学校や塾の宿題を一緒にしたり、グラウンドで体を動かしたり、カードゲームで遊んだりと児童・生徒に寄り添い、「大切なことは子どもを一人にしないこと、一概に『学校に行くことが正しい、不登校は間違い』ではなく、一人ひとりの個性や良さを発揮できるかどうかが大事」と話します。
メンバーの李泰然(い・てよん)さん(大阪・建国高校)、中村東暖(とうあ)さん(京都・洛南高校)、小作優貴(こさく・ゆき)さん(大阪・渋谷高校)、冨士本美咲さん(大阪・堺西高校)に活動の様子を聞きました。

左から中村東暖さん、李泰然さん、冨士本美咲さん、小作優貴さん。4人は小林博隆准教授(体育科教育学)のゼミで学ぶ
――活動を始めたきっかけは
ゼミの先輩である桒原その子さん(2025年度卒業)から紹介を受けて興味を持ち、4人でボランティアを始めました。ゼミ活動でも小中学生と関わる機会が多いことや、自分たちが不登校を経験していないので、教育現場の現実を経験しておきたいとの気持ちもありました。
――どのような施設なのか
泉佐野市教育支援センターは様々な理由から不登校となっている小中学生のやすらぎの場を提供していて、「さわやかルーム」「シャイン」の2つの施設で活動しています。14人の子どもたちが通っていて元教員の方がセンター長となり、できるだけ小中学校と同じような環境で過ごせるように工夫されています。ただし、施設に通うことは小中学校への出席として扱われるので、勉強もしっかりやります。
――その中でどんな活動を
学習や運動サポート、行事の企画・運営です。平日の午前は学習面のサポートですが、学校や塾からもらった宿題を一緒にやることが多いです。学校に通っていても教室には入らず、別室登校して宿題をもらって帰る子もいるので、子どもによって宿題は違います。
午後からはグラウンドや体育館で身体を動かしたり、カードゲーム等で遊んだりすることもあります。学校の行事にあるような社会見学、デイキャンプ、マラソン大会、ハイキングなど、子どもが喜ぶようにレクリエーション要素を交えた内容にしながら企画・運営しています。施設の卒業式もメンタルフレンドで担当し、当日には教育長や指導主事の方も来られます。

イベントで漫才を披露する李さん、中村さん
――活動で工夫していることは
不登校になっている子どもは個々に事情が違いますし、初めは信頼関係がないところから作り上げていくので距離感を大切にしています。ボランティアスタッフに共有されている子どもたちの連絡ノートがあり自分たちも子どもたちの様子を書いていきますが、不登校になった背景なども分かってくるので、必ず毎回読んで子どもの状況を頭に入れておくことは重要です。「大人数が苦手」「外で遊ぶことが苦手」「周囲に気を使いすぎて疲れてしまう」など、不登校になる理由は様々なので、その気持ちも尊重しながら活動します。慣れてくると子どもたちは自分から遊びに誘ってくれるので、他の子どもと遊んでいる時は他のメンタルフレンドとも相談しながら臨機応変に動きます。施設の方針でもあるのですが、何よりも大切なことは子どもを一人にしないことです。

マラソン大会に向けて練習、体大生の本領発揮?
――活動していて嬉しいことは
入ってきたばかりの子どもは緊張しているのかうまく話せないことも多く、尋ねたことに返事をするだけの事も多いです。そもそも話すことが苦手な子もいますが、自分たちが子どもの頃を考えると大人相手にそんなに話せなかったし、普通のことだと感じます。様々な子どもたちがいますが、「不登校の子ども」と聞いて感じる悪いイメージは無く、本当に普通の子たちばかりです。慣れてくると笑顔も増えてきて、どんどん話してくれるようになりますし、遊んでいて楽しく過ごしている様子を見ているとこちらも嬉しいです。

デイキャンプでの一コマ、子どもたちよりもはしゃいでます
――実際に活動してみて「不登校」に対してどう思うか
理想は不登校にならないことだと思いますが、個人の状況にもよるので本人の意思の問題だけではないと思います。賛否はあるとは思いますが、一概に「学校に行くことは正しい、不登校は間違い」ではなく、必ずしも皆が同じである必要はないと感じます。学校という集団の中での秩序も大切ですが、一人ひとりの個性や良さを発揮できるかも大切だと思います。考えるべきことは不登校にならないように防ぐこと、なったとしても一概に悪く考えないこと、自分たち大人が不登校を無視しないことだと学びました。
――不登校を防ぐためには?不登校になったとしたらどうすれば良いか
教育現場で考えればクラス単位ではなく、どれだけ生徒個人を見ていくかだと思います。子どもたちと話していると一度のきっかけよりも、いくつもの蓄積で不登校になることが多いように感じます。難しいことだとは思いますが、早い段階でそれに気付ければ不登校を防ぐことができると思います。
それでも不登校を完全に防ぐことは難しいですし、なったとしても駄目なことではありません。学校復帰を希望する子どもなら、教室以外にも居場所を作る、カウンセラーの配置など、教室に入れなくてもまずは学校に行ける状況を作ることが大切だと思います。
また、教育支援センターには、子どもたちの学校の担任教諭が来て、一緒に活動する時もあります。先生たちも自分の仕事やプライベートの時間もあり、限られた時間で参加していると思いますが、子どもたちにとって「学校はちゃんと見てるよ」「見捨てないよ」というメッセージにもなっていると思います。
学校復帰を希望しない子どもも、ここに来ることで学校の出席としてカウントされるので、勉強もできますし、学校と同じように社会見学などの行事もイベント等で経験できます。規則正しく生活することは大切な習慣なので、学校に行かなくてもそれに替わるような環境を大人が整えることが大切だと思います。
――活動して学んだことは
ゼミ内では教員志望者が多いですが、実際に教育現場を経験し、個人としっかり向き合うことの大切さを学べました。それと同時に不登校問題はなかなか答えの出ない課題だと思いますが、活動を通して実際に体験し深く考えたことは、将来教員を目指す僕たちにとって大切な実体験になります。また、教員志望者でなくても様々な環境の子どもと話したり彼らと向き合った経験は、社会人になった時、自分が親になった時の大きな財産になると思っています。
教育支援センターのさわやかルームセンター長
「当センターはメンタルフレンドの学習支援、卓球やカードゲームなどの活動を通して子どもたちを支えています。メンタルフレンドと卓球をプレーするうちに100回を超えたラリーが続くようになり、それが自信なることもありました。また防災学習の一環として、体大生による能登でのボランティア活動の体験談や、東日本大震災時の避難生活の話を聴く機会もあります。子どもたちにとってメンタルフレンドは、自分を認めてくれる大切な存在。過去5年間で100名以上の大学生メンタルフレンドのうち6割以上が体大生です。今後も多くの学生の皆さんがボランティアに参加してくだされば嬉しいです」
4人が学ぶゼミの小林博隆准教授(体育科教育学)
「ゼミ生に普段から『授業やクラブ活動以外の空き時間をどのように過ごすのかが重要』と話していて、時間を無駄にせず未来の自分への先行投資の気持ちで行動してほしいと思っています。今回のボランティアについても、学生らが自主的に取り組んでいる活動です。これからも先輩・後輩・同期の繋がりを大切に、地域の子どもたちと関わってほしいと思います」



