東日本大震災復興支援「第18回サンライズキャンプ」 参加学生が活動報告

 昨年9月に実施された東日本大震災の復興支援活動「第18回サンライズキャンプ 被災地復興支援活動in福島」の活動報告会が2月4日、D号館とL号館であり、活動に参加した学生のうち4名が代表して実施した内容を報告しました。

D号館での報告会の様子、左から市川ほのかさん(教育学部2年)、中尾海世(かいせい)さん(体育学部4年)

D号館での報告会の様子、左から市川ほのかさん(教育学部2年)、中尾海世(かいせい)さん(体育学部4年)

 「サンライズキャンプ」は東日本大震災が起きた2011年の10月、福島県から大阪に避難した子どもたちと学生が大学構内で1泊のキャンプを通じて交流したことをきっかけにスタートしました。翌12年から、地域のNPO法人と社会貢献センターが連携して学生を被災地に派遣し、学生たちが健康科学やスポーツ指導など大学で学んだ知識を活かして「体育大学だからこそできる支援」に取り組んでいます。

 派遣当初は、がれきや土砂の撤去が中心でしたが、13年からは、震災の影響を受け若者が県外流出し十分に行えなくなった環境整備などの奉仕活動、高齢者への体力測定や仮設住宅でのサロン活動、公園など遊ぶ場をなくした子どもたちとのスポーツ交流など、その時のニーズに合わせて内容を少しずつ変えながら支援活動を継続してきました。今年度は応募があった学生16名と、第1回から参加しているスポーツ科学部・池島明子教授(レクリエーション、健康づくり)、中山健教授(スポーツ社会学)ら教職員4名の計20名が参加しました。

 今回の報告会では、1年生らに対し、「震災遺構や原子力災害伝承館などの施設見学」「津波被災体験の講話会」「環境整備活動」「高齢者の体力測定や運動指導」「地域スポーツクラブや小中学生とのスポーツ交流」などの活動について報告があり、キャンプで得た学びや感じた思いを伝えました。

L号館での報告会の様子、左から池田翔さん(体育学部3年)、今谷快翔(はやと)さん(体育学部4年)

L号館での報告会の様子、左から池田翔さん(体育学部3年)、今谷快翔(はやと)さん(体育学部4年)

—施設見学・津波被災体験の講話会—
 サンライズキャンプでは、一行は現地到着後、地震と津波の被害状況がほぼ当時のまま残る震災遺構の浪江町立請戸小学校を見学。児童の避難状況を説明するパネル展示や、地震と津波によって崩壊した壁や床、むき出しになった配線などを目の当たりにしました。また、震災直後の被害や原発事故の様子と、その後の復興のあゆみを伝える原子力災害伝承館では、当時を知る方たちの証言や映像、実物資料を見学。さらに、原発事故後の除染土壌などを、最終的に処分するまでの一定期間、安全に保管し集中的に管理するため、福島第一原子力発電所を取り囲むように整備された中間貯蔵施設について学びました。福島第一原子力発電所を遠目に捉えることのできる中間貯蔵施設では、実際に周囲の放射線量を測定し、場所によって放射線量が変わることについて身をもって体験しました。
 その後、地元のNPO法人「つながっぺ南相馬」元代表で、震災の翌年から2023年までサンライズキャンプを支えてくださっていた今野由喜さんから、津波被災体験を聴きました。高台へ避難中に車ごと津波に飲み込まれ、首元まで海水が押し寄せる中「死を覚悟した」と話す今野さん。震災後も、ガソリンや食料、生活用品などの生きていくために必要な物資が手に入らない状況が続き、「生きるために必死だった」と当時の様子を話しました。
 最終日には、震災や原発事故の惨状を伝え、忘れないよう思いを込め、地域の方の協力のもと作られたおれたちの伝承館を訪ね、震災と原発事故をテーマに福島にゆかりのある作家らによって制作された、絵画、写真、木彫などのアート作品を鑑賞しました。

 報告会で、中尾海世さん(体育学部4年、石川・星稜高校出身)は、「一生忘れることのない3.11がそこにはあった。今ある生活は決して当たり前ではないことを痛感した」と振り返りました。実際に自分の目で震災遺構や伝承施設を見て、津波被災体験談を耳で聴いた学生たちは、震災発生当時の緊迫した様子や生々しい被害状況だけでなく、被災された方々の記憶や感情などの思いをも身に染みて実感し、一人ひとりが防災について考え直す貴重な契機となりました。

—環境整備活動—
 JR小高駅前では、朝6時から参加学生全員で雑草取りをしました。自分たちの身長ほど伸びてしまった草を見た学生は、震災の影響を受けて若者が県外に流出したことで、これまでPTAや町内会、青年団などが担ってきた奉仕活動が十分に行えない現状に気付かされました。
 また、原発事故以来、農作物を栽培できる土地が少なくなる一方で、たくさん設置されるようになった太陽光パネル。そのパネル下の土地を有効活用したみょうが栽培施設で、みょうがの収穫作業にも取り組みました。4時間にわたる収穫作業は、体力に自信のある学生達でもくたくたになるものでしたが、高齢者の皆さんはまだまだ収穫を続けています。学生たちは、高齢者の体力と忍耐力の高さを実感する反面、若い農業従事者が不足している状況の深刻さを改めて認識しました。

—高齢者の体力測定や運動指導・スポーツ交流—
 サンライズキャンプでは、地域の高齢者の認知機能をはじめ、筋肉量や骨密度などの項目を測定してデータを渡し、自宅で手軽にできる脳トレや筋トレをレクチャーする「お元気度チェック」を実施しました。キャンプ開催前からトレーニングを考案するなど企画から運営まで学生を中心に準備を進め、今回は17名の参加がありました。毎年参加する高齢者も多く、昨年もキャンプに参加して親しくなった学生から「○○さん、この数値が去年より上がっていますよ」と説明を受けるなど交流しました。
 総合型地域スポーツクラブの浮舟うきうきクラブの皆さんとのスポーツ交流では、ラージボール卓球を行いました。クラブの皆さんからアドバイスをもらい、得点した際にはみんなで達成感を味わうなど、互いに楽しい時間を過ごしました。
 かしま文化スポーツ少年団や元気っこクラブに所属する地元の小中学生とのスポーツ交流では、ラグビーと野球に分かれて、それぞれのアレンジゲームを行いました。子どもたちが普段しないような遊びを相手に分かりやすく教えることは、学生にとっても指導力の向上や学びにつながりました。競技ドッジボールチームでもある、かしま文化スポーツ少年団の皆さんとは、ドッジボールで対戦しました。ハンディキャップなしで対戦し、学生は小中学生に完敗。年齢差を忘れるほど楽しみ、子どもたちからは、「楽しかった」「また一緒にしたい」と嬉しい言葉をもらいました。

 報告会では、今谷快翔(はやと)さん(体育学部4年、三重・名張青峰高校)は、「参加した学生それぞれが、持ち前のコミュニケーション能力を活かして、参加者ととても楽しそうに話している様子が見られた。スポーツを通じて、日常的に大学生と関わる機会が少ない地域の方と交流することは、体育大学生ならではの活動だと感じた」と話しました。自分たちで考え、準備した企画を喜んでもらえたこと、子どもから高齢者まで年齢の壁を越えて思いを共有できたことなど、学生にとって一つひとつの出来事がとても心に残る経験となりました。

 報告会の最後に、市川ほのかさん(教育学部2年、大阪・浪速高校)は「実際に被災した場所に行くことで学ぶことが多くあると考え、キャンプに参加した。将来、(自分が)教員になった時に、このキャンプで学んで得たことを子どもたちに伝え、震災について考えてもらいたい」とキャンプに参加した動機や実際に参加して感じた気持ちを言葉にしました。

 また、池田翔さん(体育学部3年、福島・学法石川高校)は、「実際にボランティアに参加して、自分にできる小さな支援の大切さを学ぶことができた。震災の記憶や教訓を風化せず、『自分ごと』として防災や地域のつながりを考える力を育てることこそ、サンライズキャンプの魅力だと感じている」と思いを伝え、1年生らに向けて次年度のサンライズキャンプへの参加を呼びかけました。

 震災から10年以上が経った今でも、直接現地に出向いて活動することによって、参加学生には大規模災害に向き合う姿勢を学ぶ大切な機会になっているとともに、今後の自分自身のキャリアそのものを考え直すきっかけにもつながっています。このような報告会を通して、多くの学生に活動が共有されることを願っています。