筆者:中西啄真(スポーツ科学部講師)
1.トレーニングの語源
皆さんが競技力向上のために行っている「トレーニング(training)」について、その本来の意味や目的を考えたことはあるでしょうか。トレーニングは「鍛え上げる」「追い込む」ものとして捉えられがちですが、その語源は「何かを引き出す」「導く」という意味に由来しています。つまり、トレーニングとは単に身体を鍛えたり追い込んだりする行為ではなく、自身の内にある能力を引き出し、目標や目的の達成へと導くためのプロセスであると考えることができます。
2.感覚 × 客観的指標
トレーニングをより効果的に実施・指導するための手段の一つとして、スポーツ科学に基づく客観的な指標の活用が挙げられます。客観的な指標とは、誰が見ても同様に判断することができる「数値」や「データ」を指します。
例えば、スマートフォンやタブレットを用いて自身の競技動作を確認した経験がある人も多いでしょう。その映像をもとに動作の良し悪しを判断したり、トップ選手の動作と比較したりすることは有効ですが、こうした評価は感覚に依存する部分が大きく、判断が曖昧になりやすいという課題もあります。そこで競技動作を数値化することで、動作の違いや課題をより明確に把握することが可能となります。さらに、先行研究で明らかにされている記録の優れた選手やトップアスリートの動作データと比較することで、記録向上に向けた動作改善のポイントを、より具体的に捉えることができます。また、記録が良かった時と悪かった時の動作データを比較することで、自身の投擲動作の特徴や、良い記録を生み出した要因を、より正確に分析することもできます。これらの客観的指標を自身の感覚とすり合わせることで、トレーニングの質は高まり、目標達成により近づくと考えられます。
さらに、多くの競技者が実施しているウエイトトレーニングにおいても、近年注目されているVBT(Velocity-Based Training)デバイスを用いた客観的な評価が可能です。VBTデバイスによって挙上速度を測定することで、一般的に評価される最大筋力に加え、多くの競技種目で重要となる最大パワーを評価することができます。加えて、自身のパフォーマンスにおいて「筋力」と「スピード」のいずれに課題があるのかを分析し、トレーニングの方向性やバランスを調整することも可能となります。

3.想像の先へ!スポーツ科学が導く、未だ見ぬ自分
トレーニングとは、単に身体を追い込むことではなく、自身の能力を引き出し、目標へと導くためのプロセスです。そのためには、これまで培ってきた競技感覚を大切にしながら、スポーツ科学に基づく客観的な指標を活用することが重要となります。感覚と客観的指標(数値・データ)を融合させることで、自身の強みや課題をより正確に把握することができ、トレーニングの質はさらに高まります。大阪体育大学における科学的視点を取り入れたトレーニングは、自身の想像を超えた新たなパフォーマンスへの扉を開くでしょう。

中西啄真(スポーツ科学部講師)
専門分野はコーチングおよびスポーツバイオメカニクス。陸上競技部の投擲監督として指導を行いながら、主に投擲種目を対象に、コーチングおよびスポーツバイオメカニクスに関する研究活動を行っている。主な担当科目は「陸上競技IA・IB」「体力トレーニング論・実習」など。
関連サイト
○中西啄真講師
○大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」
