2018.01.17

体育学部:荒木雅信教授の最終講義を行いました。

13日(土)、荒木雅信教授の最終講義がL201教室で行われました。 荒木先生は1974年3月に大阪体育大学を卒業(6期生)、大阪体育大学専攻科に続き、筑波大学大学院に進学しました。本学には1983年より奉職し、以来35年の長きにわたり、教育、研究活動に尽力してきましたが、今年度をもって退職します。会場には多くの関係者の皆様が集まり、大体大最後の講義に耳を傾けました。

荒木先生は学生時代バスケットボールをしていたこともあり、筑波大学大学院に行くまでは、本学でバスケットボール部のコーチをしていました。コーチ時代に選手としてのスキルに大きな差はないのに、シュート率が安定している選手とそうでない選手がいる。これはきっと、パーソナリティーに関する問題だろう、と興味を持ったことをきっかけに、スポーツ心理学の探究が始まりました。30年以上経った今も心理学研究への情熱は冷めることはありません。

荒木先生の話です。

多くの研究を重ねる中で特にこだわったのが、一流選手のデータ収集です。一流選手が脳や心で処理している心理状態の測定と分析をすることで、目標値を客観的に得ることができ、それが、真の心理サポートをするための基準となる指標になると考えたからです。2000年から日本スポーツ心理学会でスポーツメンタルトレーニング指導士の認定をしています。データがあったからこそ、自信をもってサポートできる基準になりました。

学生の皆さんに是非お伝えしておきたい事があります。
まず、得た知識はフィールドで実践しないといけません。スポーツの場面には一度として同じ状況はありませんので、常に様々な場面で当てはめて考える必要があります。大体大には、そういったフィールドがたくさんあります。フィールドでの実践は学びの場です。皆さんがゼミ論で発表した内容にも、教科書やテキストではなく、経験した中から「なぜだろう」「どうしてだろう」が研究課題になったはず。クラブ活動、野外実習、そういう場所には教育・研究のヒントがたくさんあります。それを大事にしてください。
2つ目は、スポーツ分野を学んでいる学生として、【1938(大正13)年】という年を覚えてください。体育科学研究の基礎が始まった年です。体育心理だけではなくて、体育に関する諸科学を研究し、その中の1分野として、心理学が研究されていました。戦争で閉鎖になりましたが、この施設が残っていれば、JISSの機能ももっと発達していたと思います。
そして、大体大のプライドとレガシー。「世に類を見ないことを創造し作り出していく」。世の中にあるもの、を追随していてはダメです。大体大は常に「世に無いもの」を考えて作っています。それがプライドです。「学校体育」「社会体育」だけの体育の世界に、新たに「生産体育」という言葉を大体大で発見し、魅力を感じました。大島謙吉先生が作られた言葉で、新しい体育・スポーツの領域をめざしたのです。ただ、時代は「学校体育」を要請し、本学もそちらにシフトした。だからこそ今の大体大があります。大体大は常に新しい、時代の変化に柔軟に対応しています。西日本初の体育系大学大学院設置もその一つ。スポーツ心理学専門のコースもできました。本当に驚きでした。真の心理サポートができる学生を育てたい、カウンセリングマインドを持った教員を育てたいと願い、スポーツ心理学コースができました。こういったコースは日本にはありません。プライドと自覚をもって、学んでほしいと思います。
また悲願だった日本体育学会を招致しました。大島先生が常に唱えていた「平和と安念への貢献」「青少年への貢献」そして、新たに「健康と共生」を加えて「スポーツと人と社会」をテーマに討論しました。スポーツの本質は言語、民族、宗教、政治の違いを越えて拡がるという事を、大島先生はずっと追求していました。私たちはこの思いをDNAとして持っています。これがレガシーです。ただ、レガシーを形成するために、今どういう選択をするか迫られています。スポーツ科学を志向するのか、体育を志向するのかを選択しないといけないという事です。なぜなら、「スポーツ科学」はスポーツ科学者の占有分野ではなくなったから。他の学問領域から、スポーツ科学へのアプローチが始まっています。大阪体育大学は他の学問教育と競い合うのか、それとも体育に戻るのか、選択を迫られています。2020年東京オリンピック以降に大きなかじ取りが必要かもしれません。

私はこの素晴らしい大阪体育大学を出て、新たな環境に身を置きます。新たな研究を始めるには、今までとは違った環境に身を置かないと、強い信念に基づく思想、思考が湧いてこないと思ったからです。違う大学で、これからも皆さんと学び合いたいと思っています。ありがとうございました。

大体大生だったころの意外な「ポアンカレ予想」の話も飛び出し、思わぬ一面に会場は笑顔に包まれました。また、「心理学コースを作ったのは、私だと紹介されたが、心理学コースすべての先生で作り上げた。そして、それをしっかりと支えてくれたのは学生諸君」「日の目を見ない研究も多くあったが、常に、『手を抜かない、丁寧な研究をする』をモットーに、今後も研究を続けていく」という話が、とても印象的でした。